スケーリングの準備はできているか


ソーシャルベンチャーのスケーリングということを考えますと、まず何を達成したいのかを明確にし、どの段階で何を行うべきなのかを考えていく必要があります。

また、別に重要なことですが、エビデンス(証拠)、データを評価する方法を見つけるということがあります。実際にこのような影響を起こした、成果が上がっているということを測定しなければなりません。私たちのプロジェクトが「これをやり遂げた」と言うためには、つまり財政支援した方、支援者、政府など全てが「いい考えだね、機能しているね、支援しよう」と言ってもらうにはエビデンスが必要なのです。そしてエビデンスは、支援を拡大してもらえるかどうかを考える基礎となるものです。

では、その必要なエビデンスはどのように得られるのでしょうか。スケーリングへの準備ができているとどのように判断するのでしょうか。

一つ物語をお話します。私はトライアスロンをします。皆さんの中でトライアスロンをしている方はいますか。トライアスロンをご存知でしょうか。それほど多くの方がご存知ではないようですね。

トライアスロンは水泳、自転車、マラソンを順番に行うスポーツです。トライアスロンでの大きな大会の一つにハワイアイアンマンがあります。2.4マイルの水泳、120マイルの自転車、24.2マイルのマラソンがあり、普通は8時間、あまり上手でない人は15時間もかかることもあります。ですから、朝から始めて真っ暗になるまで行われます。

私はハワイまで行ってトライアスロンをしているわけではなく、通常の半分の距離のトライアスロンを行っています。これでも6時間ぐらいかかり、大変厳しい運動量です。

はじめはもっと短い距離で、スプリントトライアスロンと呼ばれるものから始めました。その時、はじめて水の中で100人も一緒に競争したので、私は逆の方向に泳いでしまいました。何が起こっているのか、何をしているのかも自分で分かりませんでした。これはエビデンスとして残りました。今まで別のスポーツをしたことはありましたが、水泳は初めてだったので逆の方向に行ってしまいました。

三回目の挑戦では、転んで自分の自転車を壊してしまいました。私のトライアスロンの経験のうち、最初の何回かは本当にひどいものでした。私は準備ができていなかったのです。水泳も多くの人と競争する方法も知りませんでした。

最初から道具は持ってはいましたが、よいものではありませんでした。最初に使っていたゴーグルは前が見えなくなりました。非常に冷たい水の中を泳ぐので、体を暖かく保つためにはよいウエットスーツが必要でしたし、クランカーと呼ばれる速く走れない自転車を最初は使っていました。レースの途中で走りながら食事を摂らないといけません。これらには全て資源と能力が必要になります。

他の人と一緒に泳ぎ、自転車で上り坂や下り坂を走り、マラソンをし、走りながらいかに飲食するかという能力を持ち合わせなければなりません。全てには訓練と準備が必要です。ここにソーシャルベンチャーとの類似点があると思います。どちらも、資源と能力がなければスケーリングできないということです。

私はこれまで200回ほどトライアスロンをしてきました。真剣に取り組んでおり、世界中を周るうちに、多くの準備を首尾よく行い、今はエビデンスとして資源と能力を持ち合わせているといえます。重要なことは、スケーリングに及ぶ前に、エビデンスがあるかどうかということです。

充分な時間がないのでゆっくりお話しすることはできませんが、このようにエビデンスを評価するということが、アメリカ、また世界においても重要です。

その方法の1つに、エビデンスをランダム化比較試験するということがあります。研究を行う時に、過去に類似なものがあったかどうかをみます。例えば、医薬品をヒトに投薬する前にテストします。無作為にヒトを選んでグループ分けを行い、プラシボという効果がない薬を一方のグループに与えて、効果のある薬を実際に飲んだ他方のグループに効果があれば、それは薬の効果として見なせるということです。

健康、教育、財政、環境のプログラムに関わるソーシャルベンチャーでも同じことを行う必要があります。しかし、これらは調整するのは簡単であっても、判断材料を準備するのはなかなか難しいのです。

政府もランダム化比較試験の結果、評価をみたいと思っています。それが明らかにならなければ、そのプロジェクトを進めてよいかどうかの判断ができないのです。

コストが非常にかかることもあるので、試験の前後の変化を測定すること、プログラムのあとに何か変わったことがあったか、よりよいことが起きたか、アウトカムがより改善されたか、より多くの人が雇用されるようになったか、といったことを確認したデータは非常に有益です。

あなたのプログラムを提供しているグループと、提供してはいないグループとを比較するということもあります。比較対象としてほかの地域を選ぶこともあります。平均的な人口、過去の状況などを比べ、そのときの自分たちの結果を比較するということです。

教育に関するデータを集めることは簡単だといえます。学生はたくさんいるので、彼らの能力がどれだけ向上したかを測ればよいのです。一方で、健康、貧困、環境の課題に関することを測ることはより難しいといえるでしょう。一部の人にはプログラムを与え、別の人には与えないということで不均衡の問題が起こってきます。そうすると判断をつけるのが難しいのです。

このように、エビデンスとして非常に有効だと判断できた時に経営資源と組織能力をもってソーシャルビジネスをスケールアップ、スケールアウトすることができるのです。

まず、人的資源、社会関係資本、他の組織との関係はどうなのか、他者影響力はあるのか、政府との関係はどうなのか、よい関係を保っているか、財政資本はどうか。技術、天然資源、市場へのアクセスはあるのか。市場を利用するということについて、例えばチョコレートを売ろうとするなら、スーパーに商品を置いてもらう必要がありますので、このような点で市場へのアクセスが必要だということです。

スケーリングを考える前に、このようにクイックアセスメント(簡便に評価する)をする必要があります。あとでまた深く評価を行うのですが、スケーリングを始める前にこのように、まず初期評価が必要なのです。

人材が充分にいるか、人材を増やす用意はあるか、必要となった人材を今後も確保できるのか。また、コミュニケーションやマーケティングに優れ、人々を説得する力があるか。参加してもらい、その人たちの能力を生かすだけの力があるか。アライアンスの連携が優れていて、パートナーシップを選ぶことができるか。社会機関として利益を確保していくことができるのか。ほかの事に関しても成功例を生かし、スケーリングを反復することができるかなどもあります。

ここで私が言いたいのは、スケーリングの前に、今まで述べたような組織能力があるかどうか、自分で評価するということです。

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