社会的企業の概要


スライドの中にはたくさんの情報が入っておりますので、大事なことをまとめてお話したいと思います。

最初に、いくつかのスライドでイギリスの社会的企業の状況の全体の背景についてお話していきます。このスライドで申し上げたいのは、まだ私たちはある程度の論争を続けているということです。社会的企業は何かという定義、その境界はどこにあるのかということについてまだ論争中です。

私としましては、正確に定義をすることについてはそれほど興味を持っておりません。いろいろな形があり、その分野の中にはさまざまな議論があります。定義がまだ定まっていない状況なので、データが足りない、よいデータが得られないということになってしまっています。

このことについては、またスライドでお見せしますけども、いろいろな社会的企業が存在しているために、データが少し混乱しているようなところがあると思います。しかし、このことについては余り心配しすぎる必要はないと思います。

服部さんもおっしゃっていますように、社会的企業の範囲といいますと、NPOのようなチャリティーのようなところからかなり商業的なものまで大きな幅があります。そのため、その定義について論争があるのは驚くべきことではないと思います。

しかし、一応の定義がイギリスには存在します。これはイギリス貿易産業省(DTI)による2002年の定義です。読み上げます。

社会的企業というのは、この定義によりますと、まずビジネスです。社会的な目的を持ったビジネスであり、その余剰金、また収益金は、原則的に株主やオーナーに対する利益を最大化することではなく、コミュニティやビジネスに関しての目的へ再投資する、ということです。

その利益は、社会的な目的に再投資されるのであって、外部の所有者に再分配するものではない、というものです。大企業の中には社会的に善い行いをし、株主にも配当を行っているところもありますが、この定義の仕方によって社会的企業を分けて考えているわけです。

また、社会的企業の目的は社会的なこと、または環境上のものでなければならないという特徴があります。ですから収益、利益を上げることが目的ではありません。

しかし、その手法としてはソーシャルインパクトを最大化するためにビジネス、またはビジネスモデルを使います。社会的企業は大きく儲かるということではないかもしれません。続けていくだけでやっと、ということもあるかもしれません。しかし、価値としては社会的な価値と経済的な価値の両方を生み出すわけです。

社会的なミッションとしては、3つのモデルを考えることができると思います。

まず社会的なミッションが目指しているものとしては、結果としての製品やサービスといったものがあります。例えば、社会的企業の製品、サービスとして人々の健康を高めるものにはヘルスケア、健康管理、医療などがあります。または教育というのもあります。

もう一つ、目指していることとしては、プロセスということがあります。社会的なミッションをどのように達成するのかというと、組織構造により達成することができるということです。ひとつの例としては、WISE(労働包摂型社会的企業)というものがあり、なかなか仕事が見つからない人たちに雇用の機会を提供するというものです。実際に製品を生み出さないこともありますし、結果として生み出す製品は同じということもあるかもしれませんが、人の雇用のしかたのプロセスが違っているということです。

状況によっては、製品とプロセス、その両方であることもあります。一つの例としては、北西にあるFRC(Furniture Resource Centre )があります。家具をリサイクルするビジネスです。今まで懲役刑にあったり、監獄にいたりした人たちを雇用しており、2つのもの(製品と雇用)を生み出しているということになります。

社会的企業の利点としては、社会的企業は市場、サービス、請負の契約から収入を得ます。それを利用して、他のやり方では使えないようなものを収入として得ることができます。寄付、慈善による資金、補助金などを使っていけるということです。また、社会的企業はビジネスでもありますので、イノベーティブでもあり、他のNPOや慈善団体よりも市場に対しての反応が早いということです。

また、実際ならより高い給料を払わなければならないような人材を使えるという利点もあります。ただ、これも論争の的となっています。というのも、社会的企業で働く人もよい給料をもらうべきだという人もいるからです。利益が上がればその人たちの給料も上げることができるかもしれません。

次に、市場が完全市場であれば、例えばフェアトレードのコーヒーはネスレなどの商業企業と競争しますので、社会的企業はもっと効率がよい企業でなくてはいけません。

また、助成金に頼らず、収入があるという意味で自立をしているので、より自由に動くことができます。拡大可能ということもあります。急成長する必要があれば、収入があるので投資家からお金を得たり、銀行からお金を借りることもできるのです。イノベーティブでもあります。いろいろなスタッフを雇い、市場の中でイノベーティブに動くことができます。社会的企業については、正しくないような認識もあるようですが、さまざまななメリットがあるのです。

皆さん、ご存知かもしれませんがBIG ISSUEという雑誌があります。イギリスではホームレスの人たちがこの雑誌を売り、収入を得ることができ、小さなビジネスをもつことができるのです。これは一つの成功例であり、ここ20年ほど続いています。

ここで私たちが思い出さないといけないのは、社会的企業はビジネスだということです。それゆえ、ビジネスらしい脅威にあうこともあります。イギリスでは、雑誌や印刷関係の業界は、今、だんだん縮小傾向にあります。ですから、BIG ISSUEはすべての雑誌社と同じように不況に喘いでいます。利点もありますが、ほかのビジネスと同じように難しい課題も抱えているということになります。

私はスーパースターと呼びたいと思っていますが、有名なイギリスの社会的企業の例を紹介します。

こちらは先ほど申し上げた家具のリサイクルセンター、FRCでBulky Bob’sと呼ばれているところです。ここで家具を集めてきて、きれいにして、リサイクルに出すわけですが、ここで働く人たちの中には前科のある人もいます。こういう人たちを雇ってトレーニングを行うということです。

左上の写真はHCT(Hackney Community Transport)というバス会社ですが、社会的企業として普通のバス会社と競争し、請負契約を取っています。しかし、その利益は、障害者や学校の子ども達が無料で移動できることのために使われています。ビジネスとしては他のバス会社と同じですが、その利益を社会的な目的に使っているということです。

右上の写真はSELDOC(South East London Doctors Co-operative)と呼ばれている医療サービスです。これも社会的企業で、南西ロンドンでお医者さんたちが設立したものです。ヘルスケアに関するもので、必要な時に夜中でもお医者さんのところに患者をつれていくことができるサービスをしています。

右下は住宅関係の協会で、あまり高いところに住めない人たちに住居を提供しています。CSCB(Coin Street Community Builders)と呼ばれています。テムズ川のほとりにあるオックスフォードタワーの高価なレストランが助成金を出し、この活動を支えています。

社会的企業の分類の仕方を示しています。まず、社会的企業が個人の活動に頼るものか、集団的に活動を行うコミュニティの一部として仕事を行っているものなのかが上下で分かれています。左は経済的なミッション、お金を儲けることを重視することで、右は社会的なミッションに重きを置いているということです。

これを見ていただくと色んなカテゴリーがあるということがお分かりいただけると思います。この図のポイントとしましては、さっきのプレゼンテーションで見たものと似ていますが、1つのカテゴリーではなく、社会的企業はさまざまなものがあるということです。いろいろな目的や歴史、モデルを持っているのです。

データの話に戻ります。かなり複雑なので、詳しくはお読みにならなくて結構です。ただ、太字で書いたスライドの数字を見ていただきたいのですが、これは、イギリスで行われた主要な調査で社会的企業のセクターの規模を知ろうとしているわけです。

計算の仕方によって、15,000の社会的企業があるものもあれば、232,000もあるなど数字が大きく違ってきています。ですから実際にいくつあるかというのは本当にはわからないというのが実情です。15,000以上、232,000以下ではあると思うのですが、正確には計算が難しいということです。

どういう計算をするかによるし、どの組織を社会的企業とみなすかにもよります。大事な分野ではありますが、しっかり規模がわかっていないというのが実情です。このことを覚えていていただくと助かります。

ある企業がいろいろな調査によって扱われ方が違うということを示しています。ある調査では民間寄りに扱われるのですが、こちらの調査ではNPO寄り、サードセクターとして数えられています。どうしてこのような色んな数字が出てきてしまっているかというのが、これをご覧になれば分かるかと思います。見方によってこれだけ違うということです。ビジネスに近いものと考えるか、NPOに近いものと考えるかということです。

こちらにもう一つ、違う報告書が上がっています。SEC(Social Enterprise Coallition)と呼ばれる団体のものです。実は去年名前が変わりました。Social Enterprise UKという名前に変わりましたが、ここから出ている2009年のレポート、その当時はまだSECでしたので、このような形で表しております。SECは加盟制の組織でありまして、ロビー活動、社会的企業の代表として政府と掛け合います。

そちらからのデータでありますが、調査を行いました。

詳しくは見ませんが少し挙げてみたいと思うのが、まず、平均的な売上高が大変に少ない、小額である、ということです。平均して210万ポンド、年間にこれだけの売り上げしか上がっていないということです。その中で最大のものは1億ポンドの売り上げがありましたが、ほとんどの社会的企業は売上高が少ないわけです。

また、39%の社会的企業が、収入の半分を政府との契約から得ています。ですから、イギリスの社会的企業をみるときは、やはりその収入が政府関係からきているわけです。これは補助金というわけではありませんが、政府に頼っているということには変わりないでしょう。これについてはのちほどお話したいと思います。

また、2009年の時点では半分以上の社会的企業がその売り上げを伸ばしたということです。世界的な金融・経済の危機にも関わらずです。2009年はイギリスの経済が崩壊しており、苦境に陥ったにも関わらず、社会的企業は大変業績がよかったといえるでしょう。大変興味深い点だと思います。

そして、次の点、26%が女性によって運営されているということです。中小企業では女性が運営しているものは14%、つまりその半分しかありません。ですからイギリスでは、中小企業に比べて、社会的企業の女性経営者が2倍いるということです。

同じ調査の中でこのような結果も出ました。どのような活動をしているのかということですが、トップ3は、特に若者達、あるいは失業した人たちへのトレーニングやサポートをしています。次に、住宅関連ですね。先ほど見たロンドンの高級レストランを運営しているものなどです。それから教育。この3つを集めると活動の半分ほどになります。他のものは読みませんが、住宅やトレーニング、教育というところにかなり傾注していることがわかります。

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